債権・動産譲渡登記は、不動産や会社などの登記とは異なり、若干特殊なものです。事業をされている方の中でも、この手続きを活用されている方はあまり多くはないでしょう。
債権を流動化させる必要があったり、債権や動産自体を担保に融資を受けたり、また、最近ではABL(エービーエル:アセット・ベースト・レンディングの略称)という融資手法の中の手続きの一つとして利用されています。
従来は、債権譲渡に際して、第三者対抗要件として内容証明郵便による債務者への通知等が利用されていましたが、平成10年10月に施行された「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(通称:債権譲渡特例法)~その後、後記のとおり改正~」により、法人が行う債権譲渡の第三者対抗要件として登記も利用できるようになったものです。
「第三者対抗要件」とは、債権譲渡があったことを、債務者以外の第三者、すなわち債権の「二重譲渡先の譲受人」やその債権の「差押債権者」といった相手方対して、自らが債権譲受人であることを主張するための要件のことです。
要は、上記のような第三者よりも先に債権譲渡の登記をしておけば、仮に、後から差押債権者がその権利を主張してきても、債権譲渡の登記があることで、その債権譲受人は自らの権利を差押債権者に主張できるのです。
なお、譲渡された債権の債務者は登記手続きに関与しませんので、仮に登記されたとしても、そのことを知らなければ今までどおり支払いを続けていけば良いのです。債務者に対しては、登記事項証明書の交付を伴う通知をするなどして債権譲渡の事実を主張することができるとされています。
譲渡される(た)債権の債務者の方には、もしかすると、ある日突然「(あなたに対する)債権を譲渡しました。」と通知が来るかもしれません。
譲渡された債権の債権者等に確認しながら支払えるのであれば問題ありませんが、債権者の破綻などにより、この通知が、2社・3社から来たりすると、どこに支払えば良いのか迷うこともあるでしょう。
この場合、基本的には、債権譲渡の内容証明郵便が到達した時や、債権譲渡登記の日時の前後で判断することになります。
従来は、動産譲渡の第三者対抗要件として、もっぱら占有改定(民法第183条)という公示方法が利用されていたところ、債権譲渡特例法が「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」に改正されたことに伴い、法人が行う動産譲渡の第三者対抗要件として登記も利用できるようになったものです。
なお、「第三者対抗要件」の意味は、基本的に債権譲渡の場合と同じですが、動産特有の問題として、即時取得の適用を考慮しなければならない点に注意が必要です。